拡張を見たら閉塞起点を探せ

こんちは、超音波検査士の松崎です。


「拡張を見たら閉塞起点を探せ」

これは、エコー検査をする術者にとって鉄則です。

どこかが拡張しているという事は、その下流で必ず閉塞や狭窄起点があるという事です。

閉塞起点がある結果、その上流が滞り拡張するという事です。

当たり前の事ですが、これを深く理解しておくと、体格や腸管のガスなどの影響で見えにくい臓器も、見える可能性が上がります。

これは、肝臓・胆嚢・膵臓など胆管系、腎臓・尿管など泌尿器系、小腸・大腸など腸管系などどの臓器にも共通して言えることです。


今回は腎臓・尿管を例に出します。

尿管はガスの影響を受けやすく見えにくいと言われていますが、何かあるはずだという目で見ると、見える可能性がぐっと上がります。


左背部痛の患者の左腎のエコー写真です。

腎盂が拡張していますね。

右腎は特に異常ありませんでしたので、左腎盂より下流側で閉塞病変があるのではないかと疑いをかけます。


何かあるはずだという目で腎盂から尿管を追っていくと...


あった!

尿管に10mm弱の結石像を認めます。

尿管結石による、尿管閉塞の結果の腎盂拡張だった事が分かりますね。


エコーには見えるものに限界があります。

「拡張を認めたけど、閉塞起点が見えない」なんていう事もしばしば起こります。

そこで注意しなくてはいけない事は、拡張があって閉塞起点が見えない場合、下流に何かある可能性があるという事をレポートで表現する事です。

胆管が拡張しているのを見つけたけど、閉塞起点がはっきりせずCTを依頼した結果、胆管癌が見つかった。など、拡張がきっかけで重大な病変が診断されるケースも少なくありません。

なのでエコーで胆管が拡張している、腎盂が拡張している、小腸が拡張しているなど、拡張所見を認めたら、何かあるという目で検査し、閉塞起点が見えなくても病変がある可能性があるという事を知っておかなくていけません。


今回のケースは左背部痛があったので、それも一つの判断材料になります。

それに、加えて、尿管結石が詰まりやすい部位を知っておくことによって更に見つけられる可能性が上がります。


左背部痛→腎盂が拡張している→という事は、尿管結石など閉塞病変があるはずだ→尿管結石が起こりやすいのは、腎盂尿管移行部、腸骨動脈との交差部、尿管膀胱移行部だったな→ガスをどかしながら何とかその3点を見るぞ→見えた!


エコー検査は技術だけでなく、考える検査です。

エコーで得られる情報、患者の状態、解剖学的知識、病態的知識など色々な情報を組み合わせて、判断していく事が大事です。


怒りとか不安とか疲れがたまっている時も、何かが滞っているのかもしれませんね。

人の体って深いです。


松崎

技師長の日常

臨床検査技師の価値を 拡大させようと頑張る 技師長の日常

0コメント

  • 1000 / 1000